すずめの戸締まりを見てきた感想

5.0
感想・レビュー

少し遅ればせながら見てきた。もともとはあんまり映画館に観に行くつもりはなかったんだけど、いくつかのタイミングが色々と重なったので、じゃぁ行っておくか、みたいな感じ。

見てみた感想を一言でいうと、良かったなって感じ。新海監督の君の名は、天気の子、すずめの戸締まりの3作だと、一番好きかも。1回しか見てないので後々評価も変わるかもだけど。ちなみに小説版も読んでみたけど、やっぱり本編ほどの感想はなかったので、やっぱり映画としてみるのが良かったな。映画館に行ってよかった。

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正直に言えば何を書いても言い足りないとは思うので、こっから先は思ったことをザッピング的に書いてみる。あと、いろんなレビューとかを見てしまうと、自分の感想が変わっていってしまいそうなので、考察とかレビューはまだ見てない。これ書いたら色々見て回ろうと思う。

・隕石の落下→大雨ときて、ようやく真正面から向き合うことができたんだなぁっということ。もちろん、受け入れがたい人も多くいるとは思うけど、一つのポイントではある。この作品、キャンペーンの一環で全国の企業とタイアップしたり何だりやってたけど、そういう規模の地域や企業レベルからも理解も受けながら3.11の話を描けたってのは大きいんじゃないかなぁ。

・まさに物語を見た気がする。受け入れがたく、忘れがたい物事を、それでも受け入れて行かないといけないときにこそ、物語があるのだなっていうのを思っていた。物語化することで、現実逃避だったり、客観的な捉え方ができなくなるみたいなところはあるけど、それでも物語化というのは大切なんだろうな。

・風化させない、忘れないというのはとても大切で尊いことだと思うけど、正直今を生きるほとんどの人には辛すぎることで、やっぱりどこかで落とし所を見つけないといけない。そうやって落とし所をつける事自体に罪悪感を持たないようにするのが、物語なのだろう。物語というと口馴染みが良すぎるので、異化するために「ナラティブ」といったほうがいいかもしれない。

・たとえば、地震は地下に住むナマズ(竜や大魚、地震虫だったりもする)が起こしているみたいなものも、今からすれば荒唐無稽で非科学的なバカバカしい話でしかないのだけど、それは当時起こったどうしようもないこと、耐え難いことをなんとか解釈しよう、落とし込もう、飲み込もうとした先人たちの試行錯誤の結果なのだろうなっと思ったりもする。もちろん、一部には科学が未発達だった時代に経験則を物語に置き換えたようなものもあるんだろうけど、それだけにとどまらない慰めとしての物語としての側面もあるんじゃないかな。

see. 鯰絵にみる日本人の地震観の変遷
see. 災害教訓の継承に関する専門調査会報告書 第3章 地震と人びとの想像力
see. 総務省消防庁 全国災害伝承情報

・その一方で、物語の作られ方、あり方、受け入れられ方も変わってきている。世が世ならもっと長い世代、様々な人たちの口を渡りながら、文字通り人口に膾炙しながら紡がれていく物語が、一人の監督、少数の関係者によって映像として固定化されてしまうのは、ある意味すごく恐ろしい。物語自体も、変容していき、いつかは忘れ去られていくことが目的であるのだろうに。一度発信された情報が忘れられない、変われなくなった現代の怖さみたいなものを思ってしまう。

・今回の物語も、もし歴史になる中で語り継がれていったのなら、きっと閉じ師は鬼になるのだろう。鬼が大地に眠る龍を呼び起こしたため地震が起きる。その地震を鎮めるために、巫女が冥界へ下り龍、鬼と対峙する。巫女は自身を差し出すことで鬼と龍を鎮め一時の平和を得るが、それはまた繰り返しの始まりだったのだ。みたいな、季節の変化を説明する神話物語と同じような構成になっていくこともあるのだろうな。

・自分は、直前まで映画館に観に行く予定はなかったので事前準備が殆どなかったから知らなかったんだけど、ここまで3.11を描いているってのは前情報としてあったんだろうか。地震描写とか警報音があることくらいまでは知ってたけど、本当に3.11自体を扱ってくるとは思ってなかった。自分は、正直直接の被災者ではないのでダメージは少なかったけど、これ知らずに見に行ったりしたらダメージ半端なさそうだなって純粋に思った。

・小説版があるというので、映画を見た余勢を駆って読んでみたけど、ほとんど映画そのままな感じ。まぁノベライズというか、同時に書いてたみたいだからそりゃそうかって感じ。ただ、映画で見て感じたことや思ったことは、やっぱり小説では全然感じなかったので、これは映画で見るたほうが良い作品だなって思う。

正直、あの「いってきます」は心に耐え難いものがある。
そこから最後の「おかえり」の対比がまた…。

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