コンテナ物語読み終わったけど、畳み掛けてくるような勢いがすごいな。当事者たちはアレなんだろうけど、傍から見てると下手なフィクションより面白いわ。
- 作者: マルク・レビンソン,村井章子
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2007/01/18
- メディア: 単行本
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大筋としては、非常に時間とコストが掛かっていた荷揚げ荷下ろしを人手でやっている伝統的な海運業界に、アウトサイダーであるマルコム・マクリーンがコンテナを引っさげて殴り込みをかける、はじめは理解を示さない人たちを次第に巻き込みながら、的なところがあるんだろうけど、そうは問屋が卸さない。
そもそも国は規制をかけて産業を保全しようとするし、海運業界はカルテル結ぶし、荷役の人たちは労働組合を組織して対抗するし、陸運の要であるトラックや鉄道は無視するし荷主はよくわかってないしで、誰も彼もコンテナなんか相手にしたくない。さて、コンテナは普及するのか否か。乞うご期待。
と言いたいところなんだろうけど、結論から言えば現在のサプライチェーン、グローバリゼーション、ロジスティクスってのはコンテナのおかげで成り立っているわけで、最終的には国も業界も荷役の人たちもトラック業界、鉄道業界も荷主も小売もコンテナを受け入れざる負えなくなってくる。そんなことはわかっているんだけど、わかっていても面白い。
正直言って近くにいてほしくないような起業家マルコム・マクリーン、それを妨害する各方面の人たちや規制、お互いがお互いを出し抜くための条件交渉や妨害工作それぞれがそれぞれの立場で良かれと思って様々な権謀術数を繰り広げる。そのダイナミズムが淡々としているはずの文章なのに、勢いで感じられる。
でも、この本の醍醐味は、その良かれと思った権謀術数がほとんど読み外れて違った方へ違った方へ流れていくところじゃなかろうか。当のマルコム・マクリーンもコンテナという仕組みの与えるインパクトを読み間違った。会社は作るし、買うし、売るし、潰すしなんでもあり。国も業界も関係者も誰も彼もがやることなすこと裏目にでていく。それでもコンテナは普及していく。
そういう人の思惑とは全く別に技術が広がっていく様は、技術の優越だけでは語れない色々なことを考えさせてくれる気がする。本文ではいろいろな統計や数字、グラフも出てくるんだけど、そういうのをすっ飛ばしながらでも十分楽しめるし、コンテナとか物流とかに興味がなくても大丈夫。物語としても十分に楽しめる一冊でした。
ちなみにWikipediaのページを見てもこの物語の楽しさは全く伝わらない。そりゃそうだ。