VISITOR (ビジター)

感想・レビュー

私ね、自分で自分をハッキングしたことがあるんだ
ネットの中にいる私はデータ量10MBにも満たない、つまんない存在だった
自分でそんなものかと思ったら、なんか何もかもどうでも良くなっちゃって

徳田淳監督.VISITOR.三石琴乃,川澄綾子出演,1998.ギャガ・ピクチャーズ,1998,(DVD).

好きな作品なんだけど、そういえばネット上であんまり見かけないなということで書き残しておこう。映画、というよりOVAに近い作品、WOWOWで放送されたらしい。多分、自分も始めてみたのはWOWOWだったような気がする。

「日本初のフル3DCG長編作品」という触れ込みの1998年の作品。劇場用長編映画としては世界初のフルCGアニメーション作品らしいトイ・ストーリーが1995年。2年間の間に、日本のフル3DCG作品ってなかったのだろうか。まぁ、その辺は色々あるんだろう。

Wikipediaからのあらすじは以下

西暦2099年、火星の第1惑星フォボスが、謎の巨大な生命体に飲み込まれ、地球に進路を向け始めた。これに対し人類は、本来は小惑星衝突から地球を護るスペースガード財団中心に、急遽国際宇宙軍を編成する。その中には、日本の官民合同事実として派遣された民間企業の派遣OL2人がいた。派遣先は宇宙。業務は侵略者排除。ロケット1つ飛ばすにも印鑑が必要な彼女たちに今、地球の運命が託される。地球の運命は人材派遣会社のOL、柊美佳と望月リラの二人に委ねられた。

徳田淳監督.VISITOR.三石琴乃,川澄綾子出演,1998.ギャガ・ピクチャーズ,1998,(DVD).

あんまりSFとか詳しくないけど今見直してもストーリーの骨子のところはすごく良くできていてかなり面白い作品だと思う。逆に1998年前後の時代感というか、今見ると20年以上前なので古いというかなんというか。2099年にもなって、会社には喫煙所があってそこで密談が起こってたりするしね。

あとは時代背景的に、企業がまだ勢いがあって、地球存亡の危機に、広告代理店が中心になって撃退プランをプレゼンしたり、派遣社員に対するイメージってのが今とはだいぶ違ったりする。もちろん、今のジェンダー感、コンプラ的にどうなん?って思うところもあるけど、そんなことを古い作品にもち出すのはいかがなものか。そんなものは脇において置けばいい。

映像としても3DCG黎明期というか、制作の都合で「フィギュアとCGアニメーションを融合させ、フィギュアが実際に動いているような映像を見せるという制作手法の作品」ということもあって、ある種カラオケで偶に流れてくるCGイメージ映像に近いものがあったりする。今の視点で見るとだいぶアレな感じがある。

媒体も今は無きVHSとDVD。DVDも3巻に分かれているというくらい。作品自体は面白いので、今のビジュアルでリメイクしたりしてもいい気がするなぁ。需要ないかもだけど。せめてオンデマンドのサービスで見れるようにしてほしいけど無理だろうな。こういう作品、世の中には山ほどあるんだろう。切ない話です。

で、この作品の一番心に残っているのが、一番最初に引用している箇所。古い作品過ぎてネタバレもなにもないのだけど、このセリフを話したのは準主人公の望月リラ。彼女は主人公の後輩ポジションの普通の派遣社員として登場していたけど、中盤凄腕のハッカーであることが明らかになる。

主人公に、なんでそんな技能を持っていながらただの派遣社員をしているのか?と問われ、その時は「ハッカーは趣味なので仕事にしたくない」というように嘯いていた。物語終盤、最終作戦に望むに当たって漏らした本音がこれ。

今の時代だとデータ量10MBって画像一枚にも満たない、音声で1分あるかないかくらいのデータ量だから、流石にそれはって思うかもだけどね。単純なテキスト情報として考えると、ほんとにどのくらいのデータ量があるんだろう。

この「自分のちっぽけさ」ってのは古今東西、いろんな手法で語られてきたと思うんだけど、この語り口は当時見ていた自分に酷く刺さってしまったんだよな。

自然と比べた人間のちっぽけさとか、偉大な・天才と比べてとかじゃなく、純粋に何かと比較したわけでもない自分の存在自体の小ささっていうのが響いたんだろう。いまでもプログラマみたいなことをやってるし、コンピュータ、ネットワークを仕事にしている。そんな仕事をしながら、ふとした瞬間に思い出す。

ちなみに、この台詞のあとにはちゃんと「人間には数字やデータに表せない価値ってのがあるんじゃないのか」みたいなフォローがあったんだけど、それは全然、自分には響かなかった。今見直してみてもやっぱりフォローが響かないので、多分相当打ちひしがれたんだろうな、当時。

こんな事を言うのはあれだけど、いまインターネット上にあるこの映像作品に関する情報も画像や動画とかを抜きにすればどのくらいのデータ量になるんだろうかなんてのも思ったりする。

ということで、押し入れの掃除をしていたら、DVDが出てきたので、見直して、改めて思ったことを書き残しておく。あと、この作品、何が悪いってタイトルが悪い。あまりにググラビリティが低すぎて検索しづらい。せめてなにか副題みたいなのがついていればいいんだけど、それすらない。

「Visitor」で検索しても同しようもないし、「Visitor 1998」で年代いればいいだろうと思うと、どうも同じ年に同じタイトルのジャン・レノの映画があるらしい。一番引っ掛かりそうなのは「Visitor 三石琴乃」かな…。やっぱりちゃんと名前をつけるってのは大切だと思う。

ので、この記事でも引っかかるためのワードとして、キャストとスタッフを書いておく。普段は別にこういうの書かないんだけどね。わかんなくなるしね。

キャスト
柊美佳 – 三石琴乃
望月リラ – 川澄綾子
伊庭茂樹 – 千葉繁
霧山源五郎 – 立木文彦
鷲津健策 – 佐藤政道
鮎沢課長 – 加賀谷純一
佐鳥牧人 – 飛田展男

スタッフ
監督 – 徳田淳
脚本 – 伊藤和典
キャラクターデザイン – 高田明美
音楽 – 高橋圭一
ビジュアルディレクター – 鎌田恭彦
科学監修 – 立花薫
CGデザイン – 松澤正夫
制作 – コム・エヌティー
プロデューサー – 小山孝彦
製作 – ギャガ・ピクチャーズ

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